起立性調節障害(OD/Orthostatic Dysregulation)は、自律神経(交感神経・副交感神経)の働きが低下し、血行不良が起こることでさまざまな不調があらわれる病気です。立ち上がった瞬間に脳への血流が一時的に不足するため、めまいや立ちくらみといった症状が生じます。思春期に発症しやすく、中学生の約10人に1人が経験するともいわれるほど、決して珍しい病気ではありません。大切なのは、これが本人の「甘え」や「怠け」ではなく、身体の調節機能そのものの不調であるという点です。
人は横になった状態から起き上がると、重力によって血液が下半身へと移動します。通常はこの瞬間に交感神経がすばやく働いて血管を収縮させ、心臓や脳への血流を保つ仕組みが機能します。しかし起立性調節障害では、この交感神経の反応が鈍かったりタイミングが遅れたりするため、立ち上がった瞬間に脳への血流が一時的に不足し、立ちくらみ・めまい・失神などの症状が現れます。いわば「体を起こしたときに血圧を保つ自動調整機能が、うまく作動していない状態」といえます。
思春期は身長・体重が急激に伸びる時期で、心臓から脳までの距離、つまり血液を送る距離も一気に長くなります。一方で、それに見合うだけ自律神経の調整機能が追いついていないことが多く、この成長スピードのズレが症状につながると考えられています。加えて思春期特有の急激なホルモンバランスの変化も、自律神経の乱れを引き起こす要因のひとつです。遺伝的・体質的な要素も指摘されており、母親が思春期に同じような症状を経験していたケースが目立つという報告もあります。こうした体質的な要因に運動不足や不規則な生活リズムが重なることで、症状が出やすくなったり悪化したりすると考えられています。
症状は午前中に強く出やすく、午後になると回復することが多いのが特徴です。逆に夜になると元気になり、目が冴えて眠れなくなるケースもあります。重症の場合には、失神発作を起こすこともあります。
タイプによって症状の出方や重症度が異なるため、自己判断ではなく医療機関での診断が必要です。
運動不足がきっかけで発症・悪化するケースも少なくありません。
発症のピークは小学校高学年〜高校生にかけての思春期です。「起立性調節障害 中学生」「起立性調節障害 高校生」で調べる方が多いように、学齢期の子どもに特に多く見られます。成長とともに軽快することが多い一方、大人になっても症状が続くケースもあり、20代以降も自律神経の不調に悩まされる人がいます。長期化すると、抑うつや不安障害を合併するリスクも指摘されているため、早めの理解とサポートが大切です。
次のような様子が複数当てはまる場合は、一度専門家に相談することをおすすめします。
病院では、横になっている時と立ち上がった時の血圧・脈拍の変化を測定して診断します。日本小児心身医学会のガイドラインでは、該当する症状の項目数をもとに受診の目安が示されています。
※これらは一般的な特徴であり、自己診断のためのものではありません。当てはまる項目が多い場合は、医療機関や本サービスの無料相談にご相談ください。
中学生以下は、まず小児科の受診がおすすめです。高校生以上は、循環器内科・神経内科を扱う総合病院、なければ一般内科・総合内科でも相談できます。症状が強く出やすい午前中の受診が推奨されており、保護者の同伴もすすめられています。
水分・塩分摂取や軽い運動療法など、日常生活での取り組みが治療の土台になります。
「起立性調節障害」と「自律神経失調症」は混同されやすいですが、起立性調節障害は起立時の循環動態の変化に焦点を当てた、思春期に多い医学的な診断名です。一方、自律神経失調症はより広い概念で使われることが多く、明確な診断基準が定まった病名ではありません。
症状が朝に強く出るため、学校に行きたくても行けない状態が続き、結果的に不登校につながることがあります。「サボりたいだけ」と誤解されやすく、本人がさらに苦しむ悪循環に陥りやすい点が、この病気の大きな課題です。担任の先生や学校と症状について共有し、遅刻や午後からの登校、体調に応じた活動量の調整など、無理のない形での通学方法を一緒に考えることが助けになります。家族の方へのページでも、学校との連携の工夫について紹介しています。
本ページの内容は下記の情報を参考に構成しています。症状や治療に関する判断は、必ず医療機関にご相談ください。